嗚呼 パンタロン 小説 創作
嗚呼 パンタロン 小説 創作 トップ
嗚呼 パンタロン 小説 創作 プロフィール
嗚呼 パンタロン 小説 創作 小説
嗚呼 パンタロン 小説 創作 ブログ
嗚呼 パンタロン 小説 創作 掲示板
嗚呼 パンタロン 小説 創作 リンク
嗚呼 パンタロン 小説 創作 メール
嗚呼 パンタロン 小説 創作
桜井パンタロンの創作小説

今宵、月夜の下でキスを交わしましょう

1234567891011121314151617
  一覧へ 次へ >>

プロローグ

真っ白い部屋にベッドとテーブル。それに誰かが描いた女性の油絵が飾っていた。とても殺風景な場所に一ヶ月前からいる。窓は鉄格子がついている。だけど、窓を開ければ空や木々が見える。朝は、鳥のさえずりで目覚める事もある。今日は、とても気持ちの良い朝だ。
  ドアをノックする音がした。ドアは、ゆっくりと開けられる。そこには、柔和な顔をした中年男性がいた。
「やあ、おはよう。調子はどうだい?」
その、中年男性は挨拶をする。頭を下げて調子が良い事を伝えた。
「君は……誰だね?」
中年男性は、優しい声で質問をしてきた。テーブルに飲みかけのコーヒーカップを置いた。

「千夏……庄司千夏」



都内、駅前にあるカフェで浅間はブレンドコーヒーを飲みながら、ある女を待っていた。このカフェは都内でチェーン展開をしている。最近は、どの駅付近にでも見かけるようになった。店内は、ムードのあるボサノバを流し照明にこっている作りが女性に受けているようだ。浅間はそんな店の豊富なメニューの中から何を頼めば良いか分からず、いつもブレンドコーヒーを注文していた。そして、外が眺められる場所に座っていた。
  左腕に付けている金色の腕時計を眺めた。その金色に輝くシチズンのANA−DIGI−TEMPは最近、輸入雑貨にて二万円程で購入した腕時計だった。浅間は、その腕時計を仕事へ行く時もOFFの時も使用していた。八十年代に登場した腕時計の復刻なのだが、これも八十年代に登場したカシオのデータバンクに対抗して作られたのではないのかと浅間は思っていた。浅間は、データバンクより、このANA−DIGI−TEMPの方が好きであった。アナログとデジタルの融合がなんともレトロチックであったからだ。
  時計の針は、夕方の五時に指しかかっていた。外を見ると曇天の為か八月の空が気持ち、暗くなり始めていた。待ち合わせ時間はとっくに三十分は過ぎていた。浅間は胸ポケットからマイルドセブンを取り出しタバコに火を付けた。
 今日、ここで待ち合わせをしている女と浅間は初対面だ。何度もメールのやり取りをしているだけで、お互いの素性は知らない。所謂、出会い系サイトで知り合った女であった。浅間は、仕事の合間や自宅にいる時の暇な時間を使って携帯電話の出会い系サイトを利用していた。女と会う事など、浅間にとっては朝飯前の事である。ちょっと、相談事にのる事もあれば、女をその気にさせる気持ちの良い言葉を投げかけていれば会う事にこぎつけられた。会ってカフェで少し話しをしてホテルに行くのが浅間のやり方であったが、その場の対応で臨機応変に思考を変えた。女がホテルへ行く気がなさそうならば、ちょっとしたムードのあるバーへ連れて行ったりカラオケへ行ったりと、ご機嫌を取っていた。こうすれば大抵の女はホテルへ付いて行く事を浅間は経験上から分かっていた。しかし、時には何もせずに帰る事もあるが大抵の女は浅間の誘いを断らないでいた。容姿がさほど良いとは言えないが彼の喋りには女心をくすぐる何かが込められていた。
 店内を見渡している女がこちらに気が付いたようで近づいて来た。互いに携帯電話で取った写真を交換していたので分かっていた。
「……もしかして、徳憲さんですか?」
茶色に染められたロングヘアーの少し、頬がぽっちゃりとしている女が声をかけてきた。
「そうですが……もしかして洋子ちゃん?」
浅間は声をかけているのだが、さっそく女の品定めを行っていた。容姿はまずまずだろう。少し化粧が濃いのが傷であるがホテルにて休憩程度の女ならば良いだろうと内心思った。
「ごめんなさいね。結構待っていたでしょ?」
女は申し訳なさそうに喋る。
「そんな事ないよ」
言葉とは裏腹に浅間のテーブルに置かれた灰皿には何本もの吸殻が揉み消されていた。
「ちょっと、用事があって……」
「気にしていないよ。来てくれただけでありがたいもの」
浅間は心にもない事を口にした。
「何か注文をする?」
「ええ、じゃあ同じやつを」
浅間は席を立ちレジへ向かった。
  レジでブレンドコーヒーを注文して女が座っている席へ戻った。
「どうぞ」
浅間はコーヒーカップを女がいるテーブルの前に置いた。
「ありがとう」
女は緊張をしているのか、口数が少なめである。
「洋子ちゃんは今年で二十歳だったかな?」
「そうですよ。徳憲さんはいくつでしたっけ?」
「俺? 俺は、今年で二十五だよ」
「えー! まったく見えない!」
「そうかな……」
浅間は照れ隠しをしているように鼻をかいた。
  ここからが浅間の本領発揮である。数十分をかけて女を口説き落とすのだ。マシンガンのように喋り続けるのだ。そうしている内に女はいつの間にかホテルへ行く気になるからだ。他愛もない会話から本題へつなげるのも彼の持ち味であろう。
  そうこうしている内に腕時計を見ると時計の針は十八時を指していた。
「そろそろ出ようか?」
浅間は女に声をかける。女は頷く。
  カフェを出て浅間は女に目的である場所を言わずにさりげなく話しかけた。
「これからどうしようか?」
「どうします?」
「洋子ちゃんと抱き合いたいな」
  浅間はそっと女の手を握った。女は黙ってそれに従う。今日の獲物は、簡単に落とせたので楽であったと思った。
  浅間は、いくつかの場所を待ち合わせに使っていたので大抵のラブホテルはピックアップしていた。
「少し歩くけど平気?」
浅間は優しく声をかける。女は、「ええ」と答えた。


  一覧へ 次へ >>

 

 

 
Copyright (C) 2006 A-Pantaron. All RightsReserved