嗚呼 パンタロン 小説 創作
嗚呼 パンタロン 小説 創作 トップ
嗚呼 パンタロン 小説 創作 プロフィール
嗚呼 パンタロン 小説 創作 小説
嗚呼 パンタロン 小説 創作 ブログ
嗚呼 パンタロン 小説 創作 掲示板
嗚呼 パンタロン 小説 創作 リンク
嗚呼 パンタロン 小説 創作 メール
嗚呼 パンタロン 小説 創作
桜井パンタロンの創作小説

生存者一名

 
  一覧へ 次へ >>

 午前七時。携帯電話の着信メロディーが流れ出す。最近、流行のポップソングが耳に聴こえてくる。俺は、重たい瞼を少しずつと開いた。携帯電話を目覚まし時計の変わりに使っているのだ。これから起きて出勤の準備をしなければならない。だが、ベッドから起き上がるにも一苦労である。高校時代は、母が部屋にやってきて布団を持ち上げ、叩き起こしてくれたのだが、現在は一人暮らしの為、そんな事をしてくれる人もいない。ましてや、彼女の優しいキスでお目覚めと洒落込んだ事もない。窓を閉め切って冷房もつけていないので部屋は蒸し暑い。ここは、都会なので湿気が高いのであろう。地元とは違う。
 俺は、重い腰を上げて洗面所へ行く。いつものように顔を洗おうと思った。
「?」
 蛇口をひねるが水が出てこない。水道工事でも始まっているのか? そんな知らせは聞いていない。水道代もしっかりと支払っているので止まるはずはない。顔が洗えないとなんだか起きた気分がしない。仕方がない。今日は、顔を洗わずに行こう。会社へ行けば顔も洗える。電気剃刀で髭を反り、俺は洋服に着替えた。下着だけで寝ているので楽である。
 テレビをつけて今日の天気予報を観ようとした。
 だが、テレビはつかない。おかしいな……コンセントが抜けているのかな? そう思い確認をしたがしっかりはまっている。
 俺は、玄関にあるブレーカーを調べてみるが落ちてはいなかった。
「くそっ! また工事かよ」
 朝から電気も水道も使えないので腹がたった。
 いつも朝食は取らないので、そのまま自宅を出る事にした。
 ここ一週間前に会社から採用の電話があり、俺はとある工場で勤務をする事になった。高校を卒業して斡旋で地元の工場へ就職をしたのだが、先輩と折り合いがつかなく二ヶ月で退社した。母は、もう少し我慢をしろと言うのだが、俺はどうもその一つ年上の先輩と馬が合わなくて嫌いであった。なにかとつけて俺に文句を言い、突っかかってくる。仕事面では真面目にこなしていた。ただ、単純な流れ作業なので仕事は一週間で覚えた。ある日、言い合いになり喧嘩をしてしまった。言い合いの末、先輩は俺の顔面を殴ったので俺はそれに対抗して殴り返した。お互いに取っ組み合いになり、工場内の作業者に制された。それが原因となり上司にきつく叱られた。先輩の言い分では、「仕事を真面目にしていなかったので注意をした」と言っていたが、あれはあきらかに俺と喧嘩がしたかっただけなんだと思った。
 上司は、俺の言い分も聞かずにただ一方的に叱りつけるだけであった。
 俺は、嫌気がさし、その日に会社を辞めた。手続きがどうだのこうだの、社会人としては……云々と繰り返すので勝手にその場を後にした。もちろん、その月の給料は出ていない。
 俺は、こんな田舎町で終わる人間ではないと思い、地元を離れる事にした。一応、関東県内ではあるがほとんど田舎である。車がないとコンビニにも行けない場所だ。都心に住む人間が聞いたら驚くだろうが事実である。
 そして、地元から離れここ神奈川県××市に俺は移り住む事になった。電車を使えば、渋谷には二十分でアクセス出来る距離だ。母は、「仕事は、地元で探せば良いじゃないの?」と言っていたが、父は独り立ちする年齢であるからと快く賛成してくれた。引越し費用は情けないが親に出してもらった。
 神奈川県に住んだものの仕事を見つけていなかったので困った。すぐに出来る仕事をする為に登録制のアルバイトをして生計をたてていた。
 それから、二ヶ月が過ぎて現在の工場で正社員として採用されたのだ。八月初めの出来事だ。ちょうど、この月はボーナスを貰って退社する人が多いので求人数が増えるらしい。俺は、給与面や休日が多い事でこの会社を選んだ。仕事内容もごく簡単な作業だったので俺には都合良かった。学もないので体を使うしかない。会社にはどんな格好でも行って良かったので俺は、今の時期は大体、Tシャツにジーンズといった軽装で出かけた。

  一覧へ 次へ >>

 

 

 
Copyright (C) 2006 A-Pantaron. All RightsReserved