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桜井パンタロンの創作小説

安楽死−夢の中で−

 
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 20××年。時の政府が安楽死を認める意向を発表した。野党はこれに反発するのだが、与党の押しの強さにより強行された。安楽死を認めるには一つの研究所の開発装置が要因となった。開発研究者の意思としては、病に苦しむ人や病床で動けない人を安らかに眠らせたいと言う旨があった。その安楽死装置はヘッドギアのようになっており頭部にかぶせる事により安らかに眠りにつけけるそうだ。この装置の最大のウリと言えば、かぶった物が生前、一番印象強かった思い出が夢の中で現れる事だそうだ。この事で、より安眠出来るのだと自負していた。
 ある病院での出来事である。老人は、子供や孫に看取られる瞬間であった。全身に癌が転移しており死を待つしか術はなかった。家族は、毎日病に苦しむこの老人を見てはいられなかった。老人もまた、安楽死を望んでいた。老人は医師の指示に従い、安楽死の手続きをおこなった。
「これで、楽になれる……」
老人は、全身の痛みを抑えながらサインをした。医師はそれを受け取ると日付を確認した。
「今日でよろしいんですね?」
医師がサインを確認する。老人は頷いた。
 安楽死の準備を進めると家族に連絡がいった。老人の家族一同が病室にやってくる。老人の死に誰も反対はしなかった。それは、老人の闘病生活をみていてなんとも痛々しい光景を目の当たりにしていたからだ。
 老人は、家族に見守られながらヘッドギアを装着された。そして、腕に注射をすると少しずつと瞼が重たくなっていった。
「私が一番強く思っている出来事はなんだろうか……」
老人は、朦朧とした意識の中で、そんな事を考えていた。そして、眠りにつく。

 1945年3月10日、午前0時過ぎ。少年は母と二人で東京下町の長屋に住んでいた。まだまだ、春の兆しは見えていなく寒い夜であった。そんな時、けたたましく米軍が攻めて来た事を示す空襲警報が鳴り出す。少年は、驚いて床から飛び起きる。
「お母ちゃん、警報が鳴っている」
少年は、目を覚ました母に心配そうに声を奮えあげ口にした。母は、少年に大丈夫だと言って身支度を始めた。
 少年と母が素早く外に出て、地区指定の防空壕に逃げようとする。しかし、外に出た母子の目には無残にも焼け野原になっている街があった。空を見上げればB29爆撃機が焼夷弾を次々に落下させている。母子が逃げられる道等なかった。これは、後の東京大空襲であった。投下された爆弾量は約38万発、1、700万トンにのぼった。
「お母ちゃん……」
少年は、母の袖を掴む。
「大丈夫だから」
母はそう言って少年の腕を取り焼け野原になった街を走り出した。少年が走りながら街を見渡すと死体の数々があった。少年は、目をつむりながら母について行く。しかし、次の瞬間。焼夷弾の爆撃で飛び散ったガラスの破片が母の首もとを貫いた。母は、倒れこむ。
「お母ちゃん! お母ちゃん!」
少年は、倒れた母に肩を揺らし、声を大にするが母は即死をしていた。辺りは、焼け野原。死体の山。少年は憤りを感じた。
「誰か! 誰か、お母ちゃんを助けて下さい!」

 老人の心電図が停止した。
「ご臨終です」
医師は小さく呟いた。家族は、涙を流しベッドに眠る老人に抱きついた。
「おじいちゃんは、きっと幸せな夢を見て安らかに眠ったんだね」
老人の孫は涙を流し喋った。家族もそれに頷く。しかし、ふと老人の顔を見た孫は首をかしげる。老人の顔は穏やかではなく苦しんで死んでいるように見受けられたからだ。
 その数年後、ジャーナリストの集団により安楽死装置の難点を政府に投げかける。それは、装置をつけた人間の一番強い思い出を見る箇所だ。これは、良い思い出ばかりが夢に現れるわけではないと唱えた。政府もその事について頭を抱えた。研究所に改善するようにと伝えた。死に行く物にしか見られないので、どうしても試験的な事が出来なかった落ち度を認めた。それを聞いた遺族達は憤りを感じたが今となっては、過ぎてしまったので本人の言葉も聞けず訴える事も出来なかった。

あなたは、安楽死に肯定的ですか? それと否定的ですか? まだまだ、認められてはいませんが今後は認可される日も遅くはないかもしれません。しかし、このような悲劇がおこらないようにしなければなりません。





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