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桜井パンタロンの創作小説

小さな世界の観察日記

 
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 八月某日、夏の昼下がり。外では、アブラゼミの泣き声が聞こえる。夏休みの宿題を済ませた少年は、自室でエアコンの冷房に涼みながらブロックで遊んでいた。クラスメイトの友人に小学校のプールへ行こうと誘われたが、泳ぐ事が苦手である少年はそれを断った。少年は、運動が大の苦手である。どちらかと言えば自宅の中で漫画を読んだりゲームをしたりする事を好んでいた。俗に言うインドア派である。
  少年は、遊ぶ事をせずに夏の自由研究に取り掛かっていた。題材は、「小さな世界の観察日記」である。少年は、縦十センチ、横十センチの正方形のブロックをはめ込む平らな板をいくつも重ね合わせていた。今、そこにブロックで家を作ろうとしている最中である。このブロックは、米国メーカーが量産している物であり、子供から大人まで幅広い年齢層に受けているヒット商品であった。宇宙シリーズや中世ヨーロッパを舞台にしたシリーズ等、多様な種類を出していた。そんな中で、少年はシティシリーズと言う現代をモチーフにしたブロックを父から誕生日プレゼントに購入して貰った。このシリーズは、病院や消防署等が作れるので色々と複合させれば小さな街が出来た。
  少年は、そこに色々な街を作っていき眺めるのが好きであった。少年は、ある程度、街を完成させるとそれを暴君さながらに思いきり足で踏み潰し破壊させる事で胸の奥底がすっとした。
「よし、完成した!」
少年が街を完成させ、それを寝そべりながら眺めていた。そこに消防隊員や看護婦等の同メーカーから出されている付属の人形を配置させる。街は、コンビニエンスストアやスーパーマッケット、学校等があり実にリアルである。平和な街がこの小さな枠組みの中に創造されていた。
「なんだか物足りないな」
少年は、ふと口にするとブロックを積み重ね、軍事施設を作った。そこへ軍人達を配置する。
もっとリアルな街作りをしたかったので国会議事堂を設備する事にした。少年は、一つの街では物足りなかったのでスペースを拡大させ、同じ街を作った。二つの街に金銀財宝を置いておく。
「これで完成だ!」
少年は、そう言うと縦横九十センチの正方形のブロック板に向かい息を吹きかけた。
  すると、ブロックで出来た人形が動き出す。人形は生活を営み始めたのだ。少年はそれをじっと観察している。人形は、平和な生活を送り出した。人々は仕事へ行き働く、警察官や軍人はそれを見守っている。少年は、それを日記に付ける事にした。

八月×日(×曜日)晴れ
今日、ブロックで作った僕の街は平和な時間を過ごしていた。
 
  翌日、少年は目が覚めると布団から起きだし、すぐさまブロックの様子を観察した。ブロックは昨日と同様に生活を営んでいる。少年は自室に籠もりその様子をじっと眺めていた。

八月×日(×曜日)晴れ
今日もブッロクの街は平和であった。何か物足りない。

 そんな平和な日々を一週間程、日記に付けていると少年は飽きてしまった。何かアクションが起きなければ観察日記にも面白みがない。そう考えた少年は一つの街に向かいビー玉をいくつも落下した。すると、そのビー玉はブロックで出来た街を次々に破壊して行く。人形達は無表情ではあるが慌てふためいていた。その様子が実に滑稽に見えた。

八月×日(×曜日)曇り
今日、ビー玉を街に落とした。すると人形は驚いて逃げ回っていた。それが、とても愉快であった。また、暇な時に落としてやろう。

 翌日、壊れた街を人形達は修復作業をしていた。隣町からブロックに埋められてしまった人形を救助しようと消防隊員が駆けつけた。街と街は一致団結をして災害後の復興を進めた。
  少年は、またその街が修復すると災害と称して水をかけたりラジコンカーで街を破壊したりして楽しんだ。人形達は、その都度、懸命に壊れた家々を修復して行った。

八月×日(×曜日)晴れ
災害が起きると街の人々は団結して修復作業や人命救助にあたった。何とも素晴らしい人間愛だ。いや、人形愛だ。

 少年はある日、災害を起こしていた街に大きな軍事施設を設け、そこに髭をたくわえ七三分けの人形を置いた。その髭人形は、かの第二次世界大戦で多くのユダヤ人を虐殺した指導者とそっくりな出で立ちであった。軍人達も大勢配置する。少年は軍人にライフルや剣を装備させた。すると、その髭をたくわえた人形は、隣町にある金銀財宝を手に入れようと大勢の軍人を引き連れて隣町へ押しかける。そこで、財宝を持ち帰ろうとするのだが、隣町の市長や議員に制止された。それに腹を立たせたリーダー格である髭人形が、次々に隣街の人形を軍人達と共に虐殺し始めた。その光景を目の当たりにした市長や議員は仕方がなく財宝を髭人形に渡した。それを受け取ると髭人形達は自分の街へと帰って行ったのだ。  
それからと言うもの、髭人形が急に押しかけてはブロックを外して資材を持ち帰ったり労働者を集める為に人形をさらって行ったり悪行を始めた。

八月×日(×曜日)雨時々曇り
今日、髭人形と軍人を多く配置したら隣街に押しかけて行った。多くの人形を殺していた。これからは、勢力を拡大するに違いない。

少年の日記通りに平和であった街々が険悪な雰囲気になりだした。髭人形は自分の街を拡大させようと隣街にまで勢力を伸ばした。一方的に勢力拡大をする髭人形に面白みをなくした少年は、狭まって行く街側にも軍人とライフルや剣、それに戦車を配置した。
  すると、その街の人形達は武器を持ち、髭人形の街へ攻めて行ったのだ。
  そんな光景を少年は、炭酸水をストローで口にしながら眺めていた。
  街と街は手と手を取り合い互いに平和に生活を営んでいたのだが、髭人形の一件により戦争を勃発させる事になってしまった。武器を持たない市民は逃げ回るばかりである。

八月×日(×曜日)曇り
ついに街と街が戦争を始めた。これからどちらが勝つのか見物だ。また、逃げ回る市民の姿がとても愉快だ。

 隣町同士で戦争を始めると建設した住宅や公共施設が次々に破壊されて行った。髭人形達は、戦車を持ち合わせていなかったので大きな痛手になった。次々に戦車の大砲で破壊されて行く街。髭人形側も押されているばかりではなかった。実は、隣町からかき集めたブロックでミサイルを作成していたのだ。

八月×日(×曜日)晴れ
戦車を渡した街はいっきにけん制逆転になった。しかし、髭人形も負けてはいない。なんせミサイルを作っていたからだ。これを発射させたらどうなるのかが楽しみだ。

 翌日、ほぼ壊滅状態にされてしまった髭人形の街。住民は、次々に捕虜となって行った。髭人形側の軍人や市民は、絞首刑になったり、ライフルで撃たれ殺されていったりした。次々にどちらの街でも、死体の山が積まれていく。そして、ついに髭人形の住処である軍事施設へ攻め込まれる。

八月×日(×曜日)晴れ
髭人形が負けそうである。いっきに隣街が攻め込んで、立場は逆転した。早く、ミサイルを打たなければ。

 その翌日、少年の日記通りに髭人形はミサイルのボタンを押した。すると、ミサイルは隣街に落下する。次の瞬間、街はミサイルの爆風で全滅してしまった。設計ミスであったのか髭人形の街までミサイルの破壊力が押し寄せ全てを破壊してしまう。人形の首ははね飛びブロックはフィールドから全て投げ出されてしまった。
「ああ。これで、ジ・エンドか」
少年は、袋からポテトチップスを手でつまみ口に運ぶ。

八月×日(×曜日)晴れ
ミサイルが落下すると全ての街が壊滅してしまった。人形も私利私欲で動く物なんだと感じた。軍事力を拡大したのが今回、破滅にむかった要因でもあるかもしれない。

 少年の自由研究は終わった。こんな物を学校に持って行ったら先生に叱られてしまうのは目に見えている。
「何、夢日記なんて書いているんだ」と。
だから、平行して観察していた朝顔の観察日記を持って行こう。これなら無難である。
「洋介、ご飯よ」
階下から少年の母の声がした。






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